IO RESTO QUI

 突然何事かというタイトルですが、エディ・アイカウと同じくらい私が尊敬しているアスリートの自伝のタイトルです。イタリア語です。

 これを書かれたのはアンジェロ・ディ・リーヴィオという方です。エディは沈みかけた船を救う為に嵐の海に泳ぎだして行きました。EDDIE WOULD GO、エディなら行くさ、という言葉が含意する有名なエピソードです。一方、アンジェロさんは逆です。沈んだ船から次々にクルーが脱出していった中、キャプテンとして船に残りました。「俺はここに残る。」

 アンジェロさんはイタリア代表として日本にまで来た超一流のサッカー選手でした。ところが2002年夏、日本からイタリアに戻ったアンジェロさんの所属チームは破産し、解散してしまいます。チームメートは次々に他のクラブに移籍していきました。アンジェロさんにももちろんその道はありました。ところがアンジェロさんは船を下りませんでした。彼はクラブのキャプテンであり、キャプテンとして沈んだ船を再び復活させるまではそこに残ると宣言したのです。

 消滅してしまったクラブは名前さえも失いました。アンジェロさんの給料は1割以下に減りました。それでもアンジェロさんはキャプテンとして、セミプロのリーグで戦い続けました。そして2年。いくつかの幸運もありましたが、キャプテン・アンジェロのクラブは復活しました。

 今、アンジェロさんは現役最後の航海に出ています。海は荒れ、復活した船は木の葉のように揺られています。船が港に入った時、キャプテン・アンジェロは引退する予定ですが、無事に陸につけるのかどうかはまだわかりません。しかし、私は信じています。キャプテン・アンジェロは必ずやってくれる。彼は有言実行の男です。名前さえも奪われたクラブを蘇らせた男です。キャプテンの心の中には、確かなヴィジョンが存在しているはずです。

 フィオレンティーナの背番号7。男の中の男。頑張れキャプテン・アンジェロ!