サイエンス誌に太平洋の人類拡散を取り上げた論文2本同時掲載

 東京新聞にこんな記事が出ていました。共同通信の配信ですね。

「人類、太平洋に2度移住 ピロリ菌と言語の研究で

2009年1月23日 04時05分

 人の胃にすむピロリ菌の遺伝子解析から、人類は3万年以上前と5000年前の2度に分けてアジアから太平洋に向けて広まっていったことを、米ベイラー医科大消化器内科の山岡吉生准教授らの国際チームが突き止め、23日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 別の研究グループは400の土着言語を分析して5000年前の広まりを確認。山岡准教授は「全く手法が異なるピロリ菌の研究と言葉の研究が、同じ結論を導き出したとは驚きだ」と話している。

 チームはすでに、各地の先住民から採取したピロリ菌遺伝子の変化の度合いを比べる手法で、人類が約5万8000年前に東アフリカから世界に広まったのを確認している。

 今回はアジアから太平洋の島々への広まりについて調査。その結果、氷河期のため多くの島が陸続きになっていた3万7000-3万1000年前に、一部の集団がアジアからオーストラリア、パプアニューギニアに移住し、そのまま定着したとみられるのを突き止めた。

 一方、5000年前に台湾から海を東に渡った集団も確認。フィリピンやニューカレドニアに定着し、遠いところでは約9000キロ離れたニュージーランドまで達していた。

 山岡准教授は「日本人と韓国人のピロリ菌は同じ種類。いずれ日本人の詳しいルーツも解明できそうだ」としている。」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009012201001004.html?ref=rank

 早速、サイエンス誌のウェブサイトを確認。確かに1月23日号で太平洋の人類拡散を論じた論文が2本出ています。

The Peopling of the Pacific from a Bacterial Perspective
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/323/5913/527

Language Phylogenies Reveal Expansion Pulses and Pauses in Pacific Settlement
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/323/5913/479

 上の論文がピロリ菌による分析、下の論文は言語による研究ですね。ピロリ菌論文では今からおよそ5000年前、言語学論文では5230年前に台湾島を出た集団がメラネシア経由でポリネシア方向に拡散していったという数字が出ています。