昨日の記事に、某出版社でホクレアの日本航海の応援に長年取り組んでおられる方から、コメントを戴きました。
ここは重要な点ですので、記事という形でさらに昨日の論点を深めてみたいと思います。
私は電通の方々の働きを、掛け値無しに万雷の拍手に値するものだと認識しています。また私は日本で一番沢山、ナイノア氏と内田正洋さんの批判を書いている人間ですが、このお二人のしておられることにも本当に頭が下がります。彼らをサポートしているマガジンハウス社もそうです。ホクレアの日本航海が実現しつつあるという現状について勲一等を探すならば、それはやはり内田正洋さんであろうというのが私の正直な意見ですし、以上で挙げた方々にこれ以上の働きを要求するのは不当であるとも思います。
ただ、現状ではマスメディア方面が局地的に盛り上がっているだけで、それがメディア関係者以外に広がっていないのではないかと感じるのです。そして、これは問題だなと思うのです。というのは、現状ではマスメディア関係者がホクレアの日本航海に関する情報のディストリビューションを一手に引き受けていますから、どうしてもそこで(情報を)「与える側」と「与えられるのを待つしかない側」に分断されてしまう。「ホクレアが日本に来るなら何かやりたいよね」という人々の気持ちをきちんと回収していく回路が、現状では存在していない。
ですが、ポリネシア航海協会が掲げる航海の意義を鑑みれば、それは決して望ましい状況ではないのではないか。ポリネシア航海協会が私たちに何かをもたらしてくれると同時に、私たちはポリネシア航海協会に何かをもたらすことを望んでいます。それは広告代理店とマスメディアを媒介とした情報の一方通行では不可能なことです。Tシャツを買ってお金を送るだけでもなお足りないことです。
そういった状況がいかにして発生しているのか、私は良く知りません。ポリネシア航海協会が広告代理店とマスメディアの方しか見ていないのかもしれない。彼らはハワイ内部ではボランティアを募るということもやっているけれども、ハワイの外部で彼らを待っている人々に対しては、広告代理店とマスメディアにコミュニケーションの大半を任せてしまっているようにも思えます。そして、そこは多分、広告代理店やマスメディアではなく、ポリネシア航海協会自身がきちんと自覚してケアすべきことだと思うのです。
私が昨日の記事を英語でも書いたのは、そういう意味合いがありました。英語で書けば万が一の可能性としてポリネシア航海協会の内部の人間の目にとまることもあるかもしれないですから。
私がナイノア・トンプソン氏に今望むのは、演台の上からだけでなく、そして旧知の人々に対してだけでもなく、広くまた直接、日本列島の住人に語りかけ、そして私たちの声にも耳を傾けて欲しいということなのです。その方策を考えて欲しい、あるいは一緒に考えようじゃないかということです。