朝青龍関がまたも優勝しましたね。いやあ強い強い。凄い力士です。
ご存じのように朝青龍関はモンゴル出身。最近ではモンゴルや東ヨーロッパ出身の力士が多いですね。しかし、大相撲に最初に外国籍力士の旋風を巻き起こしたのはポリネシアでした。ハワイの高見山や曙、サモア系ハワイ移民の小錦に武蔵丸。西サモア出身の南海龍なんてのもいましたね。
とはいえ、武蔵丸引退後はポリネシア系の力士って見かけません。じゃあポリネシアと相撲の縁は切れてしまったのか? 小錦関はKONISHIKIになっちゃったし、曙親方はプロレスラーになってしまいましたもんね。
でも、そうじゃないです。もちろん武蔵丸親方は相撲協会に残って後進の指導を続けておられますが、それだけでもない。
ウェイン・ヴィエラWayne Vierraさんという名前、ご存じでしょうか? ・・・・・知らないよね。
ヴィエラさんはハワイ出身。曙さんの後輩として東関部屋に入り、将来を嘱望されていた力士でした。四股名は「神生岩 竜太」平成2年秋場所で序の口を全勝優勝。次の九州場所では序二段で琴別府と優勝決定戦まで持ち込みましたがこの時は敗退。まさに日の出の勢いですね。しかし幕下筆頭まで上がった時に内臓疾患でやむなく廃業、ハワイに帰られました。
なんだ、幕下までしか上がっていないんじゃないかと思うでしょ。たしかにヴィエラさんは大相撲では幕下まででした。しかし、ハワイに戻られてからアマチュアの力士としてめきめき頭角を現したヴィエラさんは、今や押しも押されぬ相撲の全米チャンピオンなんです。体格はさほど大きくはないですよ。見た感じでは110kg前後かな。ソップ型の体型で筋骨隆々。まさに男の中の男って雰囲気です。
http://www.sumo.cz/tourneys/1999/3rdaichihawaii.htm
http://www.sumoeastandwest.com/cast.html
相撲の取り口は朝青龍さんみたいですね。足腰や腕力の強さ、スピード、技のキレで、遙かに大きな対戦相手に相撲を取らせない。相撲の醍醐味を存分に味わわせてくれる力士ですよ。上のリンクでも「ウェインに勝つのは不可能に近い」って書いてありますねえ。
さて、このヴィエラさんの活動は、単に自分がアマ相撲で勝ち続けるという所に留まりません。今はオアフ島に住んでおられるそうですが、牧師さんの仕事の傍ら、近所の若者たちや子供たちを集めて、相撲を教えておられるんです。オアフ相撲協会のコーチでもある。そうそう、オアフ島って結構相撲が盛んなのだそうです。それもヴィエラさんがお住まいの地域が飛び抜けて強いし層も厚いとか。
それで、オアフ相撲協会が取り組んでいるのは、相撲をとって楽しむというだけではなくて、相撲を通して子供たちを教育していくという活動もあるんだそうですよ。なんせほら、オアフ島って、地域によっては貧困やなにかで子供たちが片っ端からグレてしまうそうですからね。礼に始まり礼に終わる相撲は、単なる格闘技を越えたものだとヴィエラさんは考えておられるんです。
また、ヴィエラさんは相撲をもっともっと普及させていって、行く行くはオリンピック競技にしたいという夢も持っておられる。
どうですか。こんなにも相撲を愛して、広めようとして下さっている方が、海外におられる。ポリネシア系力士の全盛期に相撲協会や日本のメディアが彼らにどんな態度を取っていたかを思い出すと、思わず赤面してしまいます。アホなワイドショーネタで盛り上がってる場合じゃないですよ相撲協会は。
ヴィエラさんのお話に限らず、日本からハワイあるいはオセアニアの島々に移植されて、そこで新しい芽を出している文化って、実は沢山あるんじゃないかと思います。日本の砂浜にサーフィンが根付いているように、あるいはこれからアウトリガー・カヌーが広まっていくようにね。
ところが、日本に住んでいる私たちはあまりそういう話を気にかけないし、気にかけるとすればアメリカのメインランドや西ヨーロッパで認められたとかそんな話ばっかりです。アカデミー賞とヴェネチア国際映画祭とかね。それってただの白人コンプレックスですやん。格好悪いわ。
まあ宮崎アニメや北野映画がアカデミー賞やら金熊賞やら貰うのはそれはそれで目出度いと思いますよ。村上隆はちょっとどうかと思いますけどもね。
でも、そういう話ばっかり追っていないで、ヴィエラさんのお話のように、小さいけれども地に足のついた形で文化を移植していただいているお話を、ここらで少し集めてみるのも良いんじゃないのかなと。そう思います。
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土俵上でスリ足の手本を見せているのがヴィエラさん。