内田さんの本を読みました

 内田さんの本をやっと読みました。遅い? だって忙しかったんだもん・・・・・。

 というわけで改めて紹介。

内田正洋『祝星「ホクレア」号がやって来た』エイ出版、2007年

 一読した感想ですが、えーと、予想以上に面白かった。楽しめました。普段から内田さんの連載を読んでいる人間でも、目を通す価値がありますね。例によって学者の書いた本を引用したり参考にした部分は相当に怪しいのですが、その辺は読み飛ばすとしても、内田さん個人とホクレアの関わりを書いた部分は面白かったですし、内田さんがタイガーさんやナイノア氏から聞いたのだろうと思われる数々のエピソードも興味深かった。

 読み飛ばすなんて失礼なことを書いたので、少し詳しくそちらについても触れておきましょう。少なくとも「正当性」「知識」「文明」などの概念を使っている辺りは内田さん自身が元ネタにした学者(トフラーなど)の本を充分に理解しきれていないと私は見ます。

 それと「日本だけが一国で一文明」というのはたしか中西輝政の『国民の文明史』で提唱された主張だったと思うのですが、この「国民の~」シリーズはご存じのようにちょっと独特の政治姿勢で知られる「新しい歴史教科書をつくる会」に参加した右翼の学者さんたちが書いているシリーズです。つまり、どちらかと言うと日本国の徹底的讃美を主目的とした、いわばナルシスティックなシリーズ。まあ、文明civilizationという概念の具体的な意味内容はかなり曖昧なものでして、中西輝政氏が自著の中で「自分は文明をこう定義する」と決めれば、それはそれで特に文句を言われる筋合いは無いですし、内田さんが自分は日本は一国で一文明の国だと信じるのであれば、それも思想の自由ですから何の問題もありません。

 ただ、これは人間関係に置き換えて考えていただきたいのですが、普段から「俺はちょっとただ者じゃないよ。俺は誰にも似ていない、俺一人で一ジャンル? みたいな存在だからさ。」みたいなことを本気で言っている方が身近に居たとしたらどうでしょうか。まともにその主張を受け止めるよりは、「愉快な人だなあ」となる。ですから、あまりそういう考え方に拘る必要は無いんじゃないかなと思いました。

 むしろ、内田さんは積極的に大陸アジアではなく(東南アジアには沢山の島々がありますから、島のアジア=日本列島というわけではないでしょう)太平洋諸島と日本列島の諸文化との繋がりを探求しようとしておられるのだから、敢えて日本特殊論を持ち出さなくても、とね。