凪、みたいですね。船団の経度は西経163度付近。ハワイ諸島で言えばカウアイ島より少し西、ニホア島あたり。で、その辺りを今、強い低気圧が通過中なんだそうです。そのせいで船団がいる北緯17度から18度周辺の貿易風が止んでしまった。
はて。どういうことなのか。
解説しましょう。そもそも今回、船団が利用している「貿易風」って何なのか。
貿易風とは、地球レベルの巨大な大気循環と地球の自転が生み出す空気の流れなんです。
みなさんご存じの通り、地球上で最も暑いのは赤道直下です。当然、ここは海水も温かくなっている。そして、その海水に暖められた空気も暖かい。暖かい空気は上へ上へと昇っていきます。そして昇っていった暖かい空気は寒い方、すなわち北半球なら北、南半球なら南の方に流れて行きます。こうやって流れて行った暖かい空気は、やがて熱を失って冷えてくる。そして亜熱帯の海域で上空から海面に降りて来るんですね。そうやって降りてきた「元・赤道直下の暖かい空気」は、今度は海面近くを赤道へ向かって流れていく。この海面近くの空気の流れが「貿易風」です。
普通に赤道へ流れて行くだけなら、北から南へと向かう風になりますよね。つまり北風。ところが、ここで奇妙な現象が発生します。空気は黙って北から南へ向かうだけなんですが、地球には自転というものがある。24時間で1回転するあれです。例えば北極点や南極点から50センチだけ離れた場所に旗を立てておくとしましょうか。するとこの旗は1日で極点の周りを1周する。旗の移動距離は、円の直径1メートル×円周率=円周長ですから、およそ3.14メートルだ。では赤道直下、キリマンジャロの干からびたヒョウの死体の脇に旗を立ててみる。するとこの旗は1日で40000キロメートルも移動します。つまり地球の円周長と同じだけ。
するとですよ。北から南に向かった「元・赤道直下の暖かい空気」は、赤道直下に到着するまでに地図上で見ると出発地点よりも西の経度に動いてしまうことになる。緯度によって地球の表皮の横方向の移動速度が異なるからね。
こうした現象を起こしているものは、この場合は地球の自転なのですが、それをある種の力に喩えて「コリオリの力」とも呼びます。
こちらのページが非常に判りやすい。
http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/coriolis.html
そんなわけで、「元・赤道直下の暖かい空気」は、北半球では北東から南西に向かう風になってしまうのですね。ただ、現在は低気圧がこの大気循環を乱しているので、船団の辺りに「元・赤道直下の暖かい空気」が到着出来ない。むしろ船団の北にある低気圧に南から空気が吹き込んで、船団を北に押し上げている。
ですから、28日の夜11時の船団の緯度は北緯17.63778度。27日午前11時の緯度、北緯17.42861度より0.2度、北に戻されちゃったよねとなります。