デュークさん、講義に登場

 火曜日、立教大学社会学部現代文化学科の基礎演習でデューク・カネコさんをお呼びして話をしていただきました。この日のテキストはレイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』。1956年に書かれた、主に子育て中の親向けのごく短いエッセイです。内容についてはどこの図書館にでも入っている本なので、実際にお読みいただくのが一番かと思います。

 まず、この本の内容について学生が紹介し、自分なりの意見を述べるのですが、今回は「自然だけを評価するような内容で、著者は視野が狭いと思う」という内容の発表。こういう元気な学生が沢山居ると講義は盛り上がります。何人かの学生に感想を聞いてみると、確かにこの意見には一理あるとの声が多かったですね。私の方からは、本を読む時にはその内容だけでなく、それが書かれた時代背景や、それがこれまでにどう「読まれて」来たかに注目する必要があるという解説を行いました。つまり、1956年という時点と今日では、環境問題に関する言説の量や積み重ねが全く異なっているので、むしろ『センス・オブ・ワンダー』は現代の環境保護論の出発点として捉え、今日の言説と比較しながらその歴史的意義を考えるというのが、社会学的な読み方であるということです。

 私からの解説はもう一つ、自然と人工物という二項対立で考えるのではなく、人間の創造行為の中に自然がいかに入り込んでいるかを見るという視点を持つと、こうした議論を深めていくことが出来るということ。この講義ではイマニュエル・カントが『判断力批判』で展開している、自然美と芸術美の比較論(偉大な芸術作品は神が人間に「創造させた」ものであり、自然美の変種と考えることが出来るという理論)や、美の概念と崇高の概念の比較論を紹介しながら、自然と人間の複雑な関係を考えてもらいました。

 次は、お待ちかねのデュークさんのお話です。まずスライドで「Ocean Legend」の第一ステージを紹介し、スタンドアップパドリングで伊豆大島から葉山まで漕ぐということがどういう経験だったかを話していただき、次に質疑応答という流れになりました。学生たちは、サーフボードで外洋を漕ぐというコンセプトに度肝を抜かれていましたね。デュークさんがご自身の人生経験をもとに話された、現代文明にはもう少し大自然に目を向ける態度が必要ではないかという問題提起については、学生の方から「それだけが正しい考え方とは言えないのではないか」との反論も出ましたが、デュークさんからはこれに答えて、ご自身がかつては高級外車に乗って高価なイタリア製スーツを着てという都市生活をエンジョイしていた話や、そうやって都市生活の勝ち組になればなるほど逆にそういうものが嫌になってくる人が少なくないという話、20歳前後の若さならば今は都市生活をとことん追求してみるのも悪くないのではないかという話がありました。

 最後に吉田清継さん制作のビデオを鑑賞。静止画でも充分に大迫力だったのですが、動いているのを見ると本当に魂消ます。なんちゅうことするんだこのオヤジはと(笑)。西村さんも書いておられましたが、第一ステージは「安易な気持ちでは絶対に真似しないでください」ですね。あれは西村一広さんがサポートしていたから出来たエクスペディション。というか、デュークさんもおっしゃっていたのですが、西村さんクラスの人間が伴走してくれるなら、体力的には大変だけれども、実はそんなに危険ではないとのことでした。

 ちなみに講義終了後は、女子学生たちが一斉にデュークさんを取り囲んで凄いことになってました。高級外車なんかに乗っていなくても、渋いオヤジはモテるんだなあと思って見ていたら、一人の女子学生が私に近寄ってきて一言。

「先生って、面白い知り合いが多いですよね~。」

 たしかに結城さん、デュークさんと続けば、ねえ