東京国立博物館で「マーオリ 楽園の神々」展を見てきました。
ご存じのようにマオリもまたポリネシア人の一派で、民族の起源神話そのものも伝説の航海者クペによる大航海に始まります。ですからこの展覧会でも会場の入口にはちゃんと航海カヌー「テ・アウレレ」の写真があって、会場とアオテアロアを霊的に結びつける軟玉の前にはかつての酋長のカヌーの船体を利用した記念碑がいきなり置いてあるのです。
カヌー関係の品としては、ワカ・タウア(戦闘用カヌー)の船首像と船尾像もありました。これも会場の真ん中にどーんと置かれていて、ハイライトでしたね。
熱帯のポリネシアとは違って温帯のポリネシアであるアオテアロアですから、その文化はハワイやタヒチのものとはかなり違っています。どこの広告代理店がこのチラシを作ったのか知りませんが、ちょっとイメージ違うなあという感じ。アオテアロアの深い森や山々もまたマオリ文化に強い影響を与えていたわけですからねえ。
ホクレアの航海のキャッチフレーズがone people, one oceanであるということもあって、太平洋の島々の共通性ばかりが強調されがちな昨今ですが、印東道子さんが『オセアニア:暮らしの考古学』で詳しく述べておられるように、オセアニアに限ってさえも極めて多様な文化が花開いている(いた)ということを見落とすのはよろしくないと思います。敢えて書きますが、イメージや雰囲気を消費するだけではなくて、自分が興味を持った対象について、きちんと勉強する時間も必要でしょう。この展覧会はそういう意味でとても役に立つものです。会期は半ばに差し掛かっていますが、是非見に行ってください。