アラトリステⅢ・ブレダの太陽

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 航海カヌーとは関係無い仕事の宣伝です。
 
 明日、私が翻訳で参加した本が発売されます。

アルトゥーロ・ペレス=レベルテ『アラトリステ掘Ε屮譽世梁斥曄戞淵ぅ鵐蹈奪)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4900405124/hokuleaunof0e-22

 去年からずっとやっているスペインの大ベストセラー歴史小説シリーズの3作目。そうですねえ、スペインの司馬遼太郎とでも言えばいいですかね。「ナインスゲート」なんて作品は映画化されたそうですが、この「アラトリステ」も映画化されまして、2006年度のスペイン映画を対象とした最も権威ある映画賞「ゴヤ賞」では最多の15部門にノミネートされたとか。

 内容は1624年から1625年にかけてオランダ南部、ブレダの町を巡って戦われたスペインとオランダの死闘を舞台に、当時のスペイン軍の末端の兵士たちの生き様を描いた、かなりハードな戦場小説です。この戦いは後にベラスケスが「ブレダの開城」というタイトルの絵のモチーフに使ったほどで、当時のヨーロッパ中の注目を集めたものでした。

 著者が物語を紡ぐ手腕は見事なもので、無邪気に戦場に憧れてオランダに足を踏み入れた若者が、壮絶な戦場を次々に経験して戦争のしょうもなさに気付いていくプロセスを、静謐なと言って良い筆致で描いていきます。そして、ベラスケスの名画には描き込まれなかったこの戦いのもう一つの側面を、鮮やかに浮かび上がらせるのです。決して重苦しい本ではありません。ユーモアもあります。イーストウッドの例の映画と同じくらいに絶望的な戦場を採り上げていつつも、同時に兵士たちのしたたかさやペーソスをもきちんと汲み上げていて、彼らがいかにして戦争という日常と折り合いをつけていたのかを、まさに見てきたような嘘に仕上げています。

 個人的にはこのシリーズの4巻まででは一番好きな巻ですね。5巻6巻はまだ読んでいませんが。