帰参

 短い夏休みが終わってしまいました。道東地域を駆け足で回って帰ってまいりました。カウアイ島の真っ赤な土の色がこびりついて離れなかった我が家のトレッキングブーツたちも、連日道東の大地を這い回ったおかげで、すっかり違う色に染まり直しました。

 ウトロでは藤崎達也さんにお会いして、色々とお話をきかせていただきましたよ。夜には、NPO SHINRAのスタッフの方とも一緒に食事をして来ました。話題は非常に広くて、ランス・アームストロングの顔が怖いという話から(実はSHINRAは気合いの入った自転車漕ぎ集団でもあったのです)、ウトロの先住民ツーリズムの現状や今後の見通しの話、もちろんホクレア号のお話も。

 藤崎さんはタイガー・エスペリさんの薫陶をも受けておられる方ですから(この夜もタイガーさんの早すぎる死を悔やんでおられました)、当然ホクレア号とは何か、ナイノア・トンプソンとは誰なのかもご存じです。

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 藤崎さんも、「ナイノアが来るとしたら、凄いことですよね。」とおっしゃっておられました。でも、「本当に(今度こそ)来るんですか?」と半信半疑のご様子。私自身も半信半疑なんですから、苦笑いするしかありませんでしたけれども・・・・・。

 ただ、アイヌのコミュニティに深く関わっておられるSHINRAの方々ならではの意見も色々と聞かせていただきました。例えば、ホクレア号の日本航海プランには函館と白老という寄港予定地があって、特に白老は非常に大きなアイヌのコミュニティがある地域ですから、ホクレア号が先住民問題というキーワードでアイヌのコミュニティと交流しようと考えているとすれば、当然出てくる地名であることはわかると。

 ただし、アイヌのコミュニティというのは極めて複雑なものであるから、いきなりホクレア号がポンと白老に入港してみても、アイヌの幅広い層からの関心を惹き付けたり共感を呼ぶのは難しいかもしれない。

 ここら辺、私はかなりボカして書いておりますけれども、実際にはもっと具体的にその理由も教えて下さいました。聞いてみれば、たしかに難しそうなんです。納得。

 誤解を避ける為に念を押しておきますと、アイヌのコミュニティが現状で一枚岩では無いことや、コミュニティ内部で論争があることを、SHINRAの方々は決して否定的に見てはおりません。むしろ議論はあって当然なんだ、無い方がおかしいという考え方ですね。その上で、SHINRAが取り組んでおられる知床先住民ツーリズムにしろ、ホクレア号の日本航海にしろ、アイヌのコミュニティに議論を積み重ねてもらいながら、なんとか協力していただけるように、協力していただきやすいように、持っていくべきであろうということのようです。たぶん。

 これは重要な指摘をいただいたと私は思っています。ホクレア号が日本に来るとして、そこに関わってくるのはポリネシア航海協会やハワイ日本文化センター、日本側の地方自治体、そして市民、以上終わり、ではないんです。アイヌならアイヌのコミュニティ(複数形)があるし、たぶん沖縄にも沖縄人のコミュニティがある。そういった先住民コミュニティ以外だって、九州や本州にもサーファーやパドラーのコミュニティがあり、学者としてホクレア号に関わろうとする人々があり、読書人としてホクレア号に興味を持っている方々もいる。

 どこもかしこも全然一枚岩じゃない。だから、そう簡単に事が進むと思わない方が良い。コミュニティ間の軋轢は必ず発生する。それは乗り越えていかなければいけない。頑張りなさいよ。そういう指摘ですね。

 なんかいきなり重い話になってしまったので、明るい話も。

 今回、釧路川源流部でカナディアン・カヌーに乗ってきました。ガイドをしてくださったのは、「Nanook」の橋田隆浩さん。電気も水道も電話も無い廃バスに住みながらネイチャーガイドをしておられる、と書くと、何やら恐ろしげですが、実際にはとても物腰柔らかくスマートにガイディングをしてくださる方です。
 
http://www17.ocn.ne.jp/~nanook/TOP/TOPL.new/topL.html

 さて、その日私はポリネシアのアウトリガー・カヌー柄のシャツを着ていたのですが、「Nanook」のスタッフの橋田真澄さんにそれを自慢すると(するなよ)、即座に「実は私、今、ナイノア・トンプソンの本を読んでるんですよ。」と言われてしまいました。

 ポリネシアのカヌーという話題でいきなりナイノア・トンプソンの名前がスラッと出てくる。私、ちょっと驚きました。もしかしたら、私たちが想像している以上に、ホクレア号とナイノア・トンプソンというのは知られているのかもしれないです。そうだと良いんだけどな。