訃報

 1986年に伝統的航海カヌー「ハワイキヌイ」がタヒチからアオテアロアまでの航海を行った際の航法を担当された稀代の海洋冒険家、フランシス・コーワン氏が1月5日、モオレア島にて逝去されたそうです。享年82。

 氏の遺体はアオテアロアに運ばれて火葬された後、フランス領ポリネシアのモオレア島の海に還されるとのことです。氏の葬儀に際してはフランス領タヒチのガトソン・トンサン知事が以下のような弔辞を寄せています。

「彼はフランス領ポリネシアとポリネシア人たちにかけがえの無い(航海術の)知識を遺して旅立った。今や彼は我々の時代に生きた数々の偉大な航海者たちが集う万神殿の中に一座を占めるに至った。」「彼は恐れを知らない冒険者であり、また航海者であった。」「伝統的な航海術に寄せる彼の情熱が、太平洋の偉大な開拓者たちであったポリネシア人の祖先たちの魂を、現代に蘇らせることとなった。」「空と海だけを利用する航法によって、彼は常識を越えた冒険航海を行ない、幅広い尊敬を集めるとともにポリネシア人たちの誇りともなった。」

 この他には、フランスのタヒチ総督も氏に弔辞を寄せています(残念なことにハワイでは全く氏の逝去についての報道は無いようですが)。タヒチにおいて氏がいかに航海者として尊敬を集めていたかがわかります。

 故人の功績に深く敬意を表すとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。

訃報を伝える「ハワイキヌイ2」プロジェクトのウェブサイト
http://www.hawaikinui.org/default.asp

訃報を伝えるタヒチの新聞
http://www.tahitipresse.pf/index.cfm?snav=see&presse=26377〈=2
http://www.ica.pf/articles.php?id=1218
http://www.tahitipresse.pf/index.cfm?snav=see&presse=26378
http://www.tahitipresse.pf/index.cfm?snav=see&presse=26386〈=2

訃報を伝えるアオテアロアのウェブサイト。マオリのパドラーたちからの弔辞も幾つか。
http://www.wakaama.co.nz/site/story/1001552/

氏の略歴

1926年5月6日、パペエテ生まれ。父はスコットランド人とポリネシア人のハーフ、母はフアヒネ島(仏領ポリネシア)出身のタヒチ人。父親はパペエテで港湾荷役会社を経営していたので、フランシスも家業を継いで実業家となる。

1947年、トール・ヘイエルダールの「コンティキ」のクルーとしてペルー沖からツアモツ諸島までの歴史的な航海を経験。

1956年、探検家エリック・ド・ビショップの筏「タヒチヌイ」に搭乗し、チリを目指して出航するも、この航海はチリに到達することが出来ず失敗に終わる。

1960年、古代ポリネシアの航海カヌーを復元してタヒチ・ハワイ間の航海を計画。しかしこの航海カヌーは建造中に不審火により焼失。

1980年頃、娘婿のマタヒ・ブライトウェルとともに航海カヌー「ハワイキヌイ」の建造を開始。

1986年、「ハワイキヌイ」にてタヒチからアオテアロアまでの航海を成功させる。これはホクレアによるタヒチ・アオテアロア間航海より前のこと。

2004年、「ハワイキヌイ2」建造開始。

2009年1月5日、モオレアにて永眠。

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