彼女と彼らの間にあるものを

 昨日の記事で私は、先住ハワイ人たちの歴史、日系ハワイ人たちの歴史を学ばなければならないと書きました。

 今現在ホクレア号を知っておられるような方でしたら、これはある程度納得していただける意見だと思っています。

 問題は、それをいかにして「楽園ハワイ」と繋げていくか。「楽園ハワイ」を愛する人たちに、どう語りかけていけば良いのか。そこにあるのかもしれません。

 例えば山口智子さんの『反省文:ハワイ』。AMAZONの書評をちょっとご覧になってください。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860520408/

 どうですか。惨憺たる評価ですよね。『手紙の行方:チリ』のほうがずっと良かったという意見も多い。ですが、私、両方読んでみましたけど、断然『反省文:ハワイ』の方が深いですよ。チリ編は、言ってしまえば、日本から見て地の果てに行って、日本とは懸け離れた風景や文化を見て「なんて凄い風景なんだろう。」「こんな生活もまた良いのかも知れない。」という感想をしたためた、ただそれだけの本ですから。基本的に日本人にはカンケー無い土地としてチリが描かれているし、隅から隅までエキゾティックなものへの憧れに満ちあふれている。

 でも、だからこそ、一般的な日本人の読み手の神経に障らない本でもあります。『手紙の行方:チリ』は、私たちに問いかけてこない。目を見張る風景と、そこでたくましく生きる人々に、おとぎ話の国で出会って来ましたと。そういう体裁なんですね。そこへ行くと、『反省文:ハワイ』は違う。今、日本人がハワイに何をしているのか、それはそのままで良いのかを、ダイレクトに問いかけてくる*。

 だから、山口智子ファンや、「楽園ハワイ」ファンには不快な本でしょう。イラつくでしょう。ムカつくでしょう。ウザいでしょう。

 同じ事が、ビショップ博物館にも言えます。ビショップ博物館はハワイを含むポリネシアの生活文化や歴史をテーマにした博物館ですが、日本人観光客に不人気なことでも知られています。

 ホクレア号と「楽園ハワイ」の距離はかくも遠い。しかし、実際にホクレア号がやってくれば、「楽園ハワイ」やトロピカル気分だけを消費したい人々も、港を訪れるでしょう。そのギャップをどうやって埋めていけば良いのか。

 私は、ホクレア号が持ってくるもう一つのもの、すなわち、健康で平和な未来に向かう強い意志や希望についても色々な所でしっかりと語っていく事が、これを可能にする唯一の手段ではないかと考えています。

 彼ら航海カヌーの民、Voyaging Familyは、常に「過去から学び、未来を創る」という姿勢を強調しています。だから私たちも考えましょう。ホクレア号が持ってくる過去から、日本はどんな未来を創り出せるのかを。

* 例えばホクリア・リゾートというリゾート建設ではJAL系の資本が先住ハワイ人のヘイアウを(抗議を無視して)ぶっ壊して大顰蹙を買いました。
http://www.jca.apc.org/arco/jal/index.html