イギリスで最も発行部数が多い日刊紙「デイリー・テレグラフ」に『ブレダの太陽』『帝国の黄金』の書評が出ています。単純にうらやましいです。
「冒険活劇シリーズの第3巻。アラトリステ大尉はフランドル駐留スペイン陸軍の兵士として、泥まみれのきつい軍務に従事する。同僚たちは不満たらたらだ。給与は遅配となり、戦争は終わる気配が見えない。冷たい雨の中、主人公の古傷が痛み出す。
物語の語り手はアラトリステの従者だ。今作では主人公の過去の武勲といった派手なプロットよりも、むしろ17世紀の戦争の精密な描写に重点を置いた語り口となっている。もちろん、この根暗なヒーローが血刃を振るう場面も数多く登場するのだが、本書を一言で表現するならば、皮肉なユーモアを効かせた精密な歴史小説ということになるだろう。」
http://www.telegraph.co.uk/arts/main.jhtml?xml=/arts/2008/04/12/bopb112.xml
「財政破綻と破滅的な対外戦争に悩む国王フェリペ4世は、新たな税財源を密かに発見する。彼は世を倦んだ剣客アラトリステ大尉に、脱税行為を重ねる大貴族たちの船を強奪し、目撃者は消せとの指令を下す。
アラトリステは(まるでアレクサンドル・デュマの作品と「荒野の七人」を併せたかのように)セビージャの街を歩き回る。この街はプロの殺し屋たちが仕事に事欠かない場所なのだ。作者レベルテの使うプロットは単純なもので、伝統的な物語構成を流用したものである。作者の工夫は、19世紀的な暴れん坊たちの物語を現代向けに仕立て直した(ただし言葉や構造はこの限りではない)点にある。
作者の語り口は、文学的洗練と物語のテンポの早さが両立可能であると考えられる以前の時代の凝った散文体やもったいぶった余談を、愛しげに模倣したものである。それにしてもアラトリステはあと17年も活躍するらしいが、ちょっと物語が長くなりすぎるのではないか。」
http://www.telegraph.co.uk/arts/main.jhtml?xml=/arts/2008/04/19/bogenre119.xml