帝国の黄金

 4巻の邦題は「帝国の黄金」になったみたいですね。原題は「El oro del Rey」。「王の金」。

 なんか意味不明ですね。いや、たしかにフェリペ4世陛下の所有となる金も出てきますよ。元素記号はAuね。ただ・・・・邦題としちゃあ不細工じゃないですか。何かえれえ俗臭にまみれた単語が「の」で繋がってるだけ、みたいな。ねえ。「都知事の金」「首相の金」みたいな字面。ロマンが無い。

 そこで再び強い意訳フィルターをかけてみた結果がこれでした。4巻は王室財政の話であり、王様の持っているAuの話であり、そしてスペインの黄金時代の落日の話でもあります。

 ここで一応ご説明しておきますと、当時、スペインは王国でした。Reino de Espana。帝国imperioではなかった。当時、正式にimperioと呼ばれていたのは親戚のところ、神聖ローマ帝国Imperio Romano Santoだけです。そしてスペイン人たちも、自分たちの国が帝国ではなく王国であることに何の不満も持っていなかった。「帝国」の方が脅しが効くとか格好いいとか偉そうとかいう感覚も無かった。・・・のですよ。

 ただ、研究者によると当時も非公式な場ではスペイン王国とその属領群(ナポリやネーデルラント、ヌエバ・エスパーニャ、ポルトガルなど)を総称して「帝国」という言い方をすることがあったそうです。そしてまた、レベルテの旦那もスペインを差してimperioという表現を使っている。例えば原著14頁にはこんな一節がある。

「Que si aquella infeliz España era ya un imperio en decadencia(スペインは斜陽の帝国と言って良かった)」

 かような次第で、4巻の邦題には「帝国」という言葉を使っております。「スペインは王国だろ!」という突っ込みが入る前にご説明しておきます。