flygskamを「飛び恥」と訳すことへの違和感が強い

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グレタ・トゥーンベリがバッシングされたポイントの一つが、モナコのヨットでアメリカに行ったわりには、そのヨットのクルーチェンジで3人も4人も飛行機を使って大西洋を渡っているじゃないか、偽善者め、というものだった。
 
この構図はグレタ・トゥーンベリやピエール・カシラギ公子も当然、わかっていたはずである。にも関わらず、何故、彼女らは船での渡米に拘ったのか。
 
上から目線で書いてしまうと、自分は社会学者だからこういった事例の背後には、複雑な事情が幾つも存在しており、その総和としてのアウトプットが一見不可解な形を取る場合が多い、ということを第二の本能レベルで知っている。
 
そこで、何故そこまでグレタ・トゥーンベリが飛行機を忌避するのかを昨日は色々と調べていた。
 
以下、わかったことに若干の解釈を加えて解説する。
 
【何故、飛行機を忌避するのか:flygskam運動の始まり】
 
これは、現在スウェーデン社会で非常に力を持っているflygskamという運動が背景にある。
 
2017年にスウェーデンのポピュラー歌手、 Staffan Lindbergが表明した、「今後、地球環境へのインパクトを考慮して自分は飛行機を使わないことにする」という宣言が直接の契機となっているもので、この宣言に数名の著名人(プロアスリートやオペラ歌手)が賛同し、我々は今後は飛行機を使わない生活をするという誓いを立てた。
 
禁酒同盟とか禁煙同盟の類と思えばわかりやすい。
 
ちなみに飛行機の旅客一人あたりの移動距離あたりのCO2排出量は概算では鉄道の5倍であり、バスの1.7倍である。
 
付け加えておくと、この点で飛行機と同じかそれ以上に極悪なのは自家用車であり、1人しか乗っていない自家用車は2017年の運輸省統計で鉄道の7.2倍のCO2排出量である。だから自家用車は1人で乗り回してはいけない。
 
さて、flygskamは英語ではflying shameと訳される。自分はスウェーデン人ではないので、語感まではわからないが、運動のありようを見ると
 
「飛行機を使うことに含羞を持つ」
 
となりそうだ。
 
【flygskam運動の展開】
 
スウェーデンではこの運動は幅広く受容され、2018年には航空機利用は23%減少したと見積もられている。もともと日本と違って鉄道で外国に行ける土地だから、ホリデーで飛行機を使わないとどうにもならないということでもないし、ビジネストリップはテレカンに置換することも出来る。
 
【グレタ・トゥーンベリの立場】
 
実は2017年にflygskamの誓いを立てた兄弟団の一人であるオペラ歌手はグレタ・トゥーンベリの母親である。立場的にも信条的にも、グレタ・トゥーンベリは非常に飛行機を使いづらい立場にあることがわかる。
 
筋論を突き詰めるならば、そんな人間をアメリカ大陸に招待する国連やCOP26の方が間違っている。グレタ・トゥーンベリも真剣にテレカン参加を検討していたことは、FBへの投稿から察せられる。
 
モナコの公子が「青少年への海洋教育活動」という建前で彼女を運んであげたのは、一つの解としてアリだったのではないか。
 
帰りはマースクかCMA-CGMが貨物船で彼女をヨーロッパに戻してあげれば、手を挙げた海運会社には良い宣伝になるだろう。どうですか惠谷さん。いっちょ本社に直訴してみては。
 
【日本語への誤訳】
 
このflygskamを日本に紹介したのはNHKおはよう日本であるが、その時に調子に乗りすぎた愚かな翻訳者が、これを「飛び恥」と訳した。
 
かつて流行したテレビドラマのタイトルを借用した、気が効いた訳語だったつもりなのだろうが、どうも元々のflygskamの運動を軽く観察した限りでは、日本語の
 
「恥」
 
という語は強すぎるし、他人からの眼差しを前提とした含意が、特に日本社会では強い。だから「飛び恥」というと、いかにも飛行機を使っている人や飛行機会社を糾弾する運動のように聞こえる。実際、いちいち紹介するのも面倒なので紹介しないが、「飛行機を使っている恥ずかしい人」という意味で「飛び恥」という語を、露悪として使っている用例ばかりが目に入る。彼・彼女らの恥ずべき点は飛行機を使うことではなく、又聞きと思い込みの先に進まないことなのだが。
 
しかし、管見の限りでは、スウェーデンにおけるflygskamはどちらかというとスローフード運動やマイバッグ運動に似た、スロートラベル運動として理解することが適切であるように思える。グレタ・トゥーンベリは立場的にも信条的にもどうしても飛行機には乗れない人のようだが、flygskam運動に参加している人の中には、飛行機を一切使わないのではなく、不要不急の利用を控えるという形の人もいるし、それでも全体として見れば充分に意味はある。
 
自分ならばflygskamは日本語には適切な対応概念が無いので、カタカナに写して訳語としただろう。
 
【まとめ】
 
自家用車の一人旅は止めましょう。
 
片道3000円とかで国内線飛ばしてるバリュージェットも、かなりどうかと思うよ。
 
参考リンク
http://www.bbc.com/future/story/20190909-why-flight-shame-is-making-people-swap-planes-for-trains

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